最高裁判所第一小法廷 昭和25年(あ)328号 決定 1950年7月20日
主文
本件各上告を棄却する。
当審における訴訟費用は全部被告人前川守の負担とする。
理由
被告人前川守弁護人石渡秀吉上告趣意第一点、第三点について。
所論は、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に該当しないことは明白であるから、不適法として許されない。
同第二点について。
なるほど追起訴状謄本が被告人に送達されたのは昭和二四年五月二三日であるのに、第一審が早くも同月二五日に公判を開いて、右追起訴に係る事実をも審理し、弁論を終結し、即時判決の言渡をしたことは記録によって明らかである。そして、刑訴規則一七九条第二項によれば、第一回の公判期日と被告人に対する召喚状の送達との間には、少くとも五日の猶予期間を置かなければならないことは所論のとおりである。しかしながら、同条三項には「被告人に異議がないときは、前項猶予期間を置かないことができる」と定められており、本件において被告人は出頭して異議なく弁論したのであるから、所論の違法は存在しない。のみならず、所論の事柄は第一審における出来事であり、控訴審において控訴趣旨として主張されたこともなく、また控訴審が何等判断を加えたこともないのであるから、原判決に対する不服を本旨とする上告理由としては適法でない。
被告人島田菊造弁護人小野久七上告趣意について。
所論第一点は、結局原判決における量刑不当の非難に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に該当しない。第二点については、執行猶予をつけるか否かは原事実審の自由裁量に属するところであり、本件においてこれをつけなかったことを違法と認むべきかどはない。論旨は採るを得ない。しかるに所論は明かに同四〇五条に定める事由に該当しないし、また同四一一条を適用すべきものと認められないから、同四一四条、三八六条一項三号、一八一条一項により主文のとおり決定する。
この決定は裁判官全員の一致した意見である。
(裁判長裁判官 真野 毅 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 岩松三郎)